メンバー 宮崎英樹、秦T子、K牟禮公一、N本達雄
◇1/9(土) 美濃戸口→美濃戸→赤岳鉱泉→中山尾根展望台→赤岳鉱泉△
美濃戸口の八ヶ岳山荘で情報を収集し、登山届を提出して、9:10出発。2週間前に来た時は積雪はゼロだったが、今回は数㎝ほど積もっている。まだ降って間もない感じで雪は軟らかい。美濃戸(赤岳山荘)で積雪10㎝ほど。気温が低く、雪が融けだしていないため凍結しておらず、チェーンスパイクはけっきょく赤岳鉱泉まで付けなかった。
車のタイヤが通って圧雪される部分もまだ凍っていない
参加者3人は重くて硬い雪山用登山靴を履いて歩くのが初めてなので、はじめは少し歩きづらかったと思うが、あえてチェーンスパイクなしで滑りやすい雪面を歩いてもらうことで、雪山用登山靴と雪面がコンタクトする感覚をつかんでもらった。
12:15、赤岳鉱泉着。上部は曇っていて大同心や赤岳は見えない。風はほとんど吹いていないが、とにかく寒い、というか指先が痛い。気温はマイナス15℃くらいか。まずテントを設営するが、立てる前にシャベルで雪面を削り、全員で雪を踏み踏みして平らにならす。この作業に20分ほど費やしてからテントを立てるが、張り綱を張ったり、内張りを取り付ける細かな作業をしているだけで手指が凍え、体がブルブル震えてくる。夜ならともかく、日中の赤岳鉱泉でこれだけ冷えるのは珍しい気がする。
設営を終え、テント内で少し休憩してから、12本爪アイゼンを装着して中山尾根展望台へ。このパートでは12本爪アイゼンのフラットフッティングと、爪を引っ掛けないための基本的な歩き方を覚えてもらう。
中山尾根展望台。山の上部が見えない!
引き返す途中、急な雪面をアイゼンを付けた状態で下る練習。パッと見では下れそうにない急斜面でも、雪とアイゼンを上手く使えばかなりな急斜面でも下れることを体験してもらった。
テントに戻り、体が冷えないうちに夕飯づくり。メニューはホットなキムチ鍋だが、ビールを飲む気にならないくらい寒いので、まずはホット梅酒から。鍋で体がじょじょに暖まってきて、初めてビールを飲む気になった。とにかく風がまったく吹かないのがありがたい。20時就寝。
◇1/10(日) 赤岳鉱泉→赤岩ノ頭のコル→硫黄岳→赤岳鉱泉→美濃戸→美濃戸口
4:45起床。シュラフ・シュラフカバーを片づけ、朝食や保温ポット用のお湯を沸かし、身支度するだけでどんどん時間を消費していく。時間がかかってしまうのは、厳冬期テント泊が初めてで、何が起こるのか、そして何をすべきかがわかっていないから。不用意に水を置いておけば凍り付き、テントの中には結露した霜が雪となって降ってくる。
雪山のテント泊登山では、テント内でもマイナス10℃以下になることを理解し、<段取り>をあらかじめ頭に入れてパーティ内で共有できていれば、ここまでの時間はかからない。こういうことは、とにかく体験してみないとわからないものだが、それを今回体験してもらった。今現在やるべきことと、これから向かう森林限界以上の稜線の状況がイメージできれば、身支度も素早くできるようになるだろう。
テントの中で登山靴を履き、ゲイターを付けてテント外へ。けっきょくスタートは7:05、ヘッドライトも不要な時間となった。
はじめはアイゼンを付けずに登る。ジョーゴ沢を分け、標高が上がるにつれ明らかに雪の量が増えていく。アイゼンなしで急な雪面を登る練習をする。雪山用登山靴の硬いアウトソールの摩擦を利用してのフラットフッティングや、キックステップ、インエッジ・アウトエッジを使っての登り、などを実践しながら登っていく。
標高2400mを超えると所によって雪が吹き溜まり、少し潜るように。私たちより前に20人以上が登っているようだが、それでも多少潜る。標高2500m付近で12本爪アイゼンを装着するが、雪が軟らかいたためアイゼンなしでも問題ない。
赤岩ノ頭のコルに出ると、風は2m/sくらいの西風。硫黄岳に向かって登り始めたとたんに風が強くなり始め、手の指がジンジンしてくる。頂上直下の岩場を南から巻くところの岩陰で風がピタリと止むので、ここで一息ついてから硫黄岳山頂へ。風速は10m/s以下と思われるが、とにかく気温が低いので冷える。とりあえずスマホで山頂記念写真を撮るが、素手でいられるのは5秒まで。これを超えると指がヤバいことになりそうだ。写真を数枚押さえ、逃げるように山頂をあとに。ちなみに硫黄岳山頂は雲の中で、周りの山はまったく見えなかった。
硫黄岳。写真だけ撮って素早く退散
標高2680m付近、登山道わきのちょっとした岩場で、アイゼンの前爪での登降・トラバースなどを練習したのち、赤岩ノ頭のコルまで戻ると風がなくなった。ここで12本爪アイゼンを外す。赤岩ノ頭のコルからの下り、標高2600mまでは、例年この時期には大量の雪が吹き溜まって真っ白な急斜面となり、トレースがない場合はけっこう怖い一直線の下りになるが、今回はまだジグザグな夏道が出ていたため、ノーアイゼンで問題なく下れた。
私たち4人はトレイルランナーでもあり、下りを走る楽しさを知っている。まして雪質はサラサラなうえ、赤岳鉱泉まで滑落の心配はない。雪山用登山靴の硬いアウトソールをショートスキーに見立て、少し滑りもまじえつつガンガン走って下るのが楽しい。
とはいえ、ただ楽しんでいるだけではない。登山靴で滑らない限界ギリギリの速度で走ったり(ときには限界を超えて転倒もするが)、どうすればカーブを最速で曲がれるかを実践するなどしているうち、雪上における移動の限界能力が高まっていく。限界能力が高まれば、雪上を安全に行動できる<幅>が大きく広がるのだ。もちろん、登山者とすれ違うときは歩くし、積極的に道を譲るなどの配慮は絶対に怠らない。
12時、テント帰着。テントを撤収してパッキング後、ソウンスリングで簡易チェストハーネスを作り、危険箇所に張った固定ロープへのカラビナ架け替えで安全に通過する動作の確認をする。
テントに帰着。下りてきた途端に晴れ間が出てきた
下山開始。当然、チェーンスパイクも付けず走って下る。走ると下山は早い。赤岳鉱泉から1時間半かからず美濃戸口に帰着したが、美濃戸(赤岳山荘)より下では、気温が上昇して雪が融けたことと車による圧雪のより、凍結している箇所もあった。
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